中国茶礼讃

中国茶には、それぞれに個性的な味わい6色のお茶がある…という話

こんにちは
中国茶礼讃へようこそ。
管理人の篠塚です。

中国には数え切れないほどの種類のお茶があります。これらの殆どのお茶は、同じ原材料の茶葉を使って製茶されますが、産地、摘み取る部位、収穫時期、製造工程により茶葉は個性豊かに味や香りの異なるお茶となります。今回の記事では、そうしたお茶の種類についてのアウトラインをご紹介しましょう。

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色の違いから垣間見える中国茶の基本六種

お茶として加工された茶葉は、抽出された液体の色によって次の6つに分類されます。

これらは発酵工程の違いにより差異が発生し、茶葉を全く発酵させない緑茶から、発酵の度合いやタイミングなどの方法を変化させることにより異なるお茶になるのです。

では、以下に6種類のお茶の違いや特徴、代表的なお茶を見てみましょう。

緑茶(リュウチャ)

今ある中国茶の中で、最も古い歴史を持つのが緑茶です。中国茶の生産高の60〜70%を占めるだけでなく、中国国内消費量でもトップの座を占めています。緑茶の種類は数千を越すといわれ、その多様性に惹かれる人も多いのです。

<緑茶の特徴>
製法 :不発酵。茶葉を摘んで、しおらせずに、すぐ発酵を止めるために熱を加え、茶葉を揉んで形を整えます。
味わい:清涼感のある香りと甘みとがある。すっきりとした喉越しが愉しめます。
品種 :龍井、碧螺春、黄山毛峰、太平猴魁、緑牡丹。

緑茶は、摘採(てきざい)後、茶葉の主成分であるカテキンを熱処理によって酸化発酵させないお茶で、そのため鮮やかな緑色が保持されることから緑茶と命名されました。釜で炒って火入れをするため、茶を点てると茶葉がそのまま復元します。そのため、茶湯の水色は淡く、香りが高く、渋みも少なく、さっぱりとした味わいなどの特徴をもっています。飲み方は、直接茶葉をコップや蓋碗などに入れ、そのまま飲むのがポピュラーです。

緑茶は、発酵を止める工程によって以下に区分されます。

炒青緑茶は、平坦な鉄の釜で炒って発酵を止め、丁寧に揉んだのち再び釜で炒り乾燥させて作られます。でき上がった茶葉の形状で、さらに以下の分類があります。

長炒青は、茶葉が細長く(長条形)、主な産地は浙江省、安徽省、江西省などで、これらの長炒青は、眉茶(びちゃ)と称され、「珍眉(ちんび)」、「風眉(ふうび)」、「秀眉(しょうび)」、「貢熙(こうき)」、「片茶」、「末茶」などと呼ばれています。

円妙茶は、小さなころころとした丸い形に仕上げた茶です。浙江省の「平水珠茶(へいすいたまちゃ)」が、その代表的名茶です。

細嫩炒青は、芽の部分を丁寧に摘んで仕上げたもので種類も多く、龍井、 碧螺春、雨花茶、廬山雲霧茶などがあげらます。

なお、扁妙青は、釜で押しつぶして作る茶のことで、細嫩炒青と扁炒青とはかぶるものが多いです。

烘青緑茶は、茶葉を釜で炒りあげ青殺し、茶葉を籠に入れ炭火などで炙り乾燥させて作られるものです。そのまま烘青と称される茶と、細嫩烘青と呼ばれるものとがあります。

烘青緑茶は花茶の原料とされることが多いですが、細嫩烘青は、黄山毛峰(こうざんもうほう)のような芽に白毫があるしっかりとした茶葉であるものが多く見受けられます。黄山毛峰以外にも敬亭緑雪(けいていりょくせつ)などがあります。望府銀毫(ぼうふぎんごう)、漢水銀梭(かんすいぎんさ)、午子仙毫(ごしせんごう)といった、炒青と烘青とを組み合わせた製法のお茶もあります。

晒青緑茶は、茶葉を釜で炒りあげ青殺した後、日光を用いて乾燥させ仕上げるお茶です。その多くが、散茶で飲まれるより黒茶の緊圧茶に加工されることが多いといわれます。

【製茶法】
摘採一萎凋ー蒸熱殺膏一揉捻ー乾燥ー蒸膏緑茶
摘採一萎凋ー妙熱殺膏ー揉捻ー乾燥ー烘青緑茶
摘採一萎凋ー妙熱殺膏ー揉捻ー乾燥一炒青綠茶
摘採一萎凋ー妙熱殺膏ー揉捻ー乾燥ー晒等緑茶

白茶(パイチャ)

新芽の白毛が多い品種を使う発酵度のとても軽いお茶で、白い産毛(うぶげ)に包まれた茶葉を利用することからこの名前がつきました。

<白茶の特徴>
製法:弱発酵。摘み取った茶葉をわずかに自然発酵させ、それを火入れでゆっくり乾燥させて作るシンプルなお茶。
味わい:淡く上品な味わいで、渋みが少なく、さっぱりとして飲みやすい。まろやかで甘みがあります。
品種:銀針白毫、白牡丹、寿眉。

白茶という名前が歴史上に現れたのは、宋代の徽宗帝(在位1100~1125)のときですが、当時の白茶は製法が現在のものとは異なります。現在の白茶は、太平天国の時代(1857年ごろ)に創始されたといわれています。

「淡香淡味」が特色で、お茶の湯色はほかよりも淡く、味もあっさりとしていて飲みやすいものです。
主に福建省北部一帯が産地で、茶樹によって以下の3種に分類されます。

さらに、茶摘み(摘採)の方法からも、以下の2つに分類されます。

白茶は、摘んだ茶葉を円形の平らな籠やゴザに広げしおらせ(萎凋)、 かごに紙を敷いて弱火で乾燥させ、発酵を止めるという非常に原始的な製茶法を用います。揉捻を行なって強制的に発酵を促すようなことをせず、しおらせる段階でゆっくりと発酵を進ませるのが特徴です。そのために、わずかに発酵するので、「弱発酵茶」と呼ばれます。

芽の部分を摘んで、日光の元に晒したり(日光萎凋)、室内で空気に晒して(室内萎凋)水分を90%程度まで飛ばし、最後に烘焙して乾燥仕上げを行ないます。

【製茶法】
摘採ー萎凋ー日光乾燥ー烘焙

黄茶(ホァンチャ)

黄茶は、日本ではあまり飲まれない軽度の後発酵茶です。

<黄茶の特徴>
製法:弱後発酵。緑茶と同じ工程の後、菌の力でじっくりと弱発酵させる「悶黄(メンファン)」と呼ばれる工程を経て作られます。
味わい:個性的でありながら上品な味わい。発酵による特有の甘みが特徴。
品種:君山銀針、蒙頂黄芽、

一般的にやや低めの温度お湯で淹れる。流通量が少なく、希少な茶葉。

黄茶は、一説には古代からあるとされていますが、1571年、明代の文献上に初めて現れたと言われ、18世紀には製法が完成されています。湖南省の洞庭湖にある君山島で採れる君山銀針(くんざんぎんしん)が、製品として名高いです。

性質は「緑茶」と「黒茶」との中間で、どちらかというと「緑茶」のほうに近い位置にあります。一般的にやや低めの温度の湯で淹れ、「黄湯黄葉(こうとうこうよう)」が特色とされています。

もともと黄茶は安徽省から湖北省にかけて多く作られるお茶ですが、この一体は雨量が少なく、夏に乾燥し土壌がアルカリ傾向だったため、葉は硬くなりやすく、芽も黄色という特徴がありました。そのため、一番茶は高級茶として出荷できるものの、二番茶は扱いが難しく、緑茶の製茶工程で半乾きのまま蒸らし黄変したものを焙煎し飲める様にしたものが黄茶になったともいわれています。流通量が少なく、希少なお茶です。

摘んだ部位によって、以下の3種類に分類されます。

製造工程は他のお茶とは異なり、「悶黄(もんこう)」という湿った茶葉を放置し、意図的に軽発酵させる工程が加わっています。
50%よりやや多く水分を乾燥させた後、茶葉を積み重ね、紙や湿った布をかぶせて高温多湿の場所に放置します。それによって、茶葉は、嫌気(けんき)的な環境で軽く後発酵し、黄変します。

【製茶法】
摘採ー殺膏ー烘焙一悶黄ー茶葉を冷ますー再び烘焙ー悶黄ー乾燥

青茶(チンチャ)

日本でも有名な烏龍茶や鉄観音に代表される半発酵茶(不完全発酵茶)が青茶です。

<青茶の特徴>
製法:半発酵。
味わい:他の5種類に分類されない茶葉は青茶とされます。そのため製造工程や味、香り、茶葉の形状は様々です。
品種:鳳凰単欉、凍頂烏龍、鉄観音、武夷岩茶、黄金桂、大紅袍、水仙、色種

清代(1855〜)に製法が確立され、緑茶の「鮮爽慈味(せんそうじみ)」と、紅茶の「濃厚香気(のうこうこうき)」とを併せ持つ特徴があり、福建省・広東省・台湾などで生産されるお茶です。

東南アジアを初め各地に広がって行った華橋(かきょう)が好むことから、青茶が世界に広まったといわれています。

半発酵と言ってもその幅は広く、発酵度は8%程度(包種茶)から80%程度(紅烏龍)までの幅があります。そのため、味や香りのバリ エーションも非常に豊かで、発酵度が高くなるにつれて、香りや味も淡いものから芳醇なものへと変化します。

青茶の主要産地は、福建省北部の武夷山(武夷岩茶)、福建省南部の安溪(鉄観音、黄金桂など)、広東省北部(鳳凰単欉、嶺頭単欉など)、台湾(凍頂烏龍茶、高山茶、木柵鉄観音、白毫烏龍)です。

茶葉の周りがうっすらと発酵した「三紅七緑」のものが良いといわれています。

青茶という呼び名の由来は諸説あります。

・茶葉を日光にさらす過程で、茶葉が深い緑(「木々が青々と茂る」で使われる「青」は深い緑という意)に変化することから「青茶」と呼ぶようになった説。
・発酵部分の褐色と不発酵部分の緑色とが混じり合って、見た目が青っぽく見えることから青茶と呼ぶようになった説。

【製茶法】
摘採ー萎凋(日光・室内萎凋)ー揺青ー殺青ー揉捻ー烘焙

紅茶(ホンチャ)

イギリスの紅茶文化を発展させた、全発酵のお茶です。

<紅茶の特徴>
製法:完全に発酵させた茶葉。
味わい:インドやスリランカの紅茶と比べ渋みが少なく、ストレートで飲んだ時に甘さが際立つ。甘く芳醇な香りが特徴すっきりと上品でさわやかな飲み心地です。
品種:祁門、正山小種

明代末期・清代初期(1643年頃)に製法が確立され、そのころ東洋と接触を始めていたヨーロッパ人の嗜好にあったことから広く普及した、世界のお茶文化の源泉のお茶です。

中国紅茶は、以下の3つに分類されます。

工夫とは、丁寧に時間と労力をかけて作る紅茶という意味で、高級紅茶の代名詞の様になっています。手間がかかることもあり、希少で高価です。中国を代表する紅茶の多くは工夫紅茶であり、安徽省の祁門紅茶は世界を代表する紅茶です。このほかにも、雲南省のてん滇紅(てんこう)、四川省の川紅(せんこう)、福建省の三大工夫(坦洋(たんよう)・政和(せいわ)・白琳(はくりん)などが有名です。

一方、小種紅茶は、正山小種(せいざんしょうしゅ。福建省星村鎮桐木関産)、外山小種(がいざんしょうしゅ。桐木に隣接した他地区産のもの)、煙小種の3種しかなく、市場はとても小さいといわれています。大葉種を松の木や桐の木で燻焙した煙臭の強い紅茶で、主にヨーロッパに輸出されています。

また紅砕茶は、紅茶の茶葉を小さく裁断した茶葉で、製法は工夫紅茶の工程を簡素化したものが主流で、大量生産されティーバッグなどにも利用されています。広東省の英徳紅茶がこの代表です。

「紅湯紅茶」が特色で、華南地方の人々にとっては日常茶です。しかしヨーロッパなどとは違って、ミルクや砂糖はいっさい用いることなく、これを中国風に味わうのなら、茶壷を利用し、そのままストレートで飲むのが一般的です。

主たる製茶法は、浅く大きな水槽の上部に金網を張った萎凋槽の上に一定の厚みに広げ茶葉に、下方から送風機で風を送って水分を飛ばします。さらに、揉捻機にかけ撚りをかけます。発酵は酸素が十分に行き渡るように発酵初棚に10cmほどに積み重ね室温25°C、湿度80%程度の環境で数時間行ないます。最終段階の乾燥は、毛火(110°Cで10分程度)、足火(85°Cで15分程度)の2工程に分けて行なわれ、完成した荒茶を選別した後に最後の乾燥を行ないます。

【製茶法】
摘採ー萎凋ー揉捻ー玉解ー篩分ー揉捻ー発酵ー乾燥1ー乾燥2ー選別ー乾燥3

黒茶(へイチャ)

英語でBLACK TEAと言いますと紅茶を意味しますが、中国では黒茶そのものが存在します。晒青緑茶を蒸して型で固めた、典型的な後発酵茶が黒茶です。

<青茶の特徴>
製法:摘み取り後、すぐに熱を加えた茶葉を蔵で寝かせて発酵させ、これを後発酵と言います。
味わい:他の茶葉にはない独特の滋味があり、古いものほどまろやかな味です。ワインのように経年により価値を増すものもあります。
品種:普洱茶、六堡茶、

黒茶が文献上に初めて現れたのは11世紀末の北宋時代ですが、モンゴルなど内陸部への輸送の便を考えて作られたことから、「緑茶」と同様に歴史の古いお茶だと考えられています。

タンニンの多い大葉種で作られるため、そのままでは飲みにくく、緑茶を放置してタンニンを減少させたものが、このお茶の始まりと言われています。放置している間に自然に麹菌がついて後発酵したお茶だと言えますが、近年は故意に麹菌を付けて黒茶を量産していることから、緑茶ベースのものを「生茶」、人為的に菌発酵(渥堆)させたものを「熱茶」と呼んでいます。

黒茶には、散茶のものだけではなく、むしろ固形にされた茶が多く見受けられます。大きな皿のよ うに円盤型に固形にされたお茶は「餅茶」、お碗型のようなものは「沱茶」、レンガのような形のものは「磚茶」などと呼ばれています。

製造工程は、熟茶の餅茶の場合、茶葉を萎凋させた後、殺青を行ない揉捻した荒茶を渥堆(水をかけて茶葉を湿らせ、堆積させて麹カビなどを繁殖させる行程。途中、何度か攪拌)させ、再度揉捻した
後プレスし固形にし、その後自然乾燥させます。

生茶の場合は、晒青緑茶や炒青緑茶を蒸気で加熱し湿らせ、軽く揉捻した後、プレスし固形にして、その後自然乾燥・自然発酵させます。

主要な産地は、雲南省、四川省、湖南省、安徽省などで、それぞれ作られるお茶は非常に特徴があります。その中でも有名なのは、雲南省の普洱茶で、形もさまざまです。

【製茶法】普洱茶
摘採ー殺青ー揉捻ー渥堆ー揉捻ー乾燥ー(緊圧→固形)

茶の種類で考える食事との相性

中国国内では昔から、生産量、流通量とも緑茶が主流です。ところが味と香りとを深く探求する中国の人々は、それに飽き足らず、各々の好みや食事に合わせ自由にお茶を楽しんでいます。例えば北京料理には茉莉花茶茶、広東料理には普洱茶か烏龍茶、潮州料理には烏龍茶と言う具合にです。

さらに、「医食同源」を根本思想とする中国では、お茶の効能によって飲む種類を選ぶ場合も多いようです。黒茶や紅茶など発酵度の高いお茶は体を温め、緑茶は逆に、体を涼しくする効果があるとされています。

食事や効能に合わせて、美味しく健やかに中国茶を愉しみましょう。

 

如何でしたか?

今回は、中国茶の6大分類について「中国茶には、それぞれに個性的な味わい6色のお茶がある…という話」と題して記事を書きました。それぞれのお茶に、それぞれの味わい・香り・色があり我々の五感をフル稼働させて楽しみたいものです。

次の記事では、この6種の分類の枠に収まらない、素晴らしいお茶をご紹介しましょう。

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