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中国茶礼讃へようこそ。
管理人の篠塚です。
中国で最も多く生産され、かつ最もよく飲まれているのが、歴史的にも最も古い緑茶です。産地も多く、茶葉の種類も実に豊富で数千を越すといわれ、様々な味わいを楽しめるのが魅力だと思います。今回の記事では、その緑茶の代表的銘茶をご紹介しましょう。
日本の緑茶とは異なる独自の製法と味わい。
中国の緑茶は日本の緑茶と同じく、茶葉を発酵させない不発酵茶ですが、その製造方法は異なっています。日本では茶葉を蒸すことで発酵を止めますが、中国では茶葉を釜で炒ることで発酵を止めます。そのため、中国の緑茶は日本茶よりも渋みが少なく、爽やかな後味が特徴です。また、日本茶は茶葉そのものの味を重視しますが、中国茶は味だけでなく、香りにも重点を置きます。青豆や炒り豆、栗などの香りに例えられるように、中国茶は香ばしさが持ち味です。クセがないことから、日常のお茶にふさわしいお茶と言えましょう。
製造工程の乾燥方法の違いにより緑茶は3種類に分類。
緑茶は、茶葉を摘んだらすぐに蒸したり炒ったりして、高温にすることで茶葉の発酵を止めます。この工程は殺青(さっせい)と呼ばれています。その後、茶葉を揉む工程があります。茶葉を揉み込むことで、茶葉の組織細胞を破壊し、茶の抽出がスムーズになるのです。この工程は揉捻(じゅうねん)と呼ばれています。その後は乾燥させて仕上げますが、その乾燥方法には3種類あります。釜で炒って乾燥させたものは炒青茶(しょうせいちゃ)、燻って乾燥させたものは烘青茶(こうせいちゃ)、天日干しで乾燥させたものは晒青茶(さいせいちゃ)と分類されています。緑茶は仕上げの乾燥方法の違いによって3種類に分類されていますが、さらに茶葉の形状によって細かく分類されています。
それでは以下にどんな緑茶があるか、その代表的な種類を見てみましょう。
代表的な緑茶その特徴と味わい。
明前西湖龍井
爽やかな香りと味わいが特徴の中国を代表する銘茶です。「四絶(お茶の色、香り、味、形の4つが絶品)」と称されるのにふさわしく、清の時代には皇帝に献上されたお茶です。爽やかな味わいと新鮮な花を思わせる香りが特徴です。
艶があり、細長く平べったい形が特徴の扁平状の茶葉からは、ふんわりとしたフレッシュな香りが漂います。淹れ方は中投法、上投法、二段階式を用いると良いでしょう。味は、最初は心地よい渋みを感じさせますが、徐々に甘みが感じられる様に変化していきます。余韻も心地よく深みがあります。
名称に「明前」と付くのは、清明節より以前に収穫された事を表し、希少価値が高まります。
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湯温度:85〜95℃
抽出時間:2〜3分
明前獅峰龍井
緑茶を代表する龍井の中でも特に高級とされる銘柄です。かつて清の時代には、皇帝に献上されていました。最高の茶畑と言われる獅子峰で作られ、味、香りともに持久力があります。この持久力は、気候や土壌の豊かさによるものと言われています。濃い深みと爽やかな旨味とがあり、飲むほどに幾重にも折り重なる多彩な味わいが楽しめます。
龍井茶としては栗や豆を炒めたような香りも印象的です。茶葉は細長く扁平で艶があり、本来の緑茶の適温より高温の100℃のお湯で入れても、その美味しさを十分に味わうことができます。
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湯温度:85〜100℃
抽出時間:2〜3分
径山茶
鎌倉時代に臨済宗を日本に伝えた栄西が宋から持ち帰ったことから、日本の緑茶のルーツとも言われているお茶として知られています。お茶の生産は一度衰退しましたが、1978年に歴史的な復活を遂げています。
茶葉は産毛があり、針のように細長い形状です。淹れ方は中投法、二段階法を用いると良いでしょう。口に含むと清々しい香りと爽やかな味わいとが広がり、ほのかな甘みが特徴です。バランスよく多彩な変化を見せる花のような香り、淡く輝くような緑色の水色、フレッシュで芳醇爽やかな味わいと心地よい余韻が楽しめます。
湯温度:80〜90℃
抽出時間:2〜3分
安吉白茶
浙江省安吉県で生産されるお茶です。葉脈が白玉色の新芽を積んで成長するため、「白茶」の名がついたと言われています。白い産毛の生えた、細長く鮮やかな緑色をした茶葉の美しさと、他の茶葉の3〜4杯と言うアミノ酸含有量の高さが特徴です。渋みが少なく飲みやすく、また、疲労回復や免疫力アップなど様々な効能が期待できます。香りは清らかで花のような上品さが感じられ、甘みがある味わいです。1988年には浙江省の省級名茶に選ばれています。
海抜800mの天荒坪鎮大渓村で発見された樹齢1000年近いとも言われている一本の野生の白葉茶樹を親木として、挿し木によって増やした茶樹から作られるお茶です。茶畑は昼夜の温度差が大きくお茶の栽培に適しています。
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緑茶 安吉白茶20g 中国緑茶 中国茶
湯温度:75〜85℃
抽出時間:2〜3分程度
明前黄山毛峰
安徽省にある世界遺産の黄山で作られたお茶です。中国を代表する観光地の一つでもあるこの一帯は四季を通して雲や霧が多く、温暖な気候や豊富な降水量に恵まれ、良質な茶葉を作るのにとても適した環境とされています。
「雀の舌」と称される形状をした美しい緑色をした茶葉は、白毫が多く、葉が山のようなので毛峰と名付けられています。楊貴妃も愛したお茶として知られ、アミノ酸が豊富で上品で渋みはなく滋味鮮醇でありながらとても爽やかで甘みのある余韻が後を引きます。蘭の花にも例えられる清らかな香りをもち、水色は明るく杏緑黄色です。
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湯温度:85〜95℃
抽出時間:3〜4分程度
太平猴魁
清朝の頃から高級茶として知られるお茶です。黄山市黄山区は、以前は太平県猴坑と言う地名で、<魁>とはトップと言う意味です。すなわち「太平猴魁」は「太平県猴坑のNo.1」のお茶という意味です。品種は「柿大品種」と呼ばれる大きな茶葉のもので、色は翡翠のような緑、両端が尖り、まっすぐに長く扁平の形状で、葉脈の網状の跡が見られます。一芽二葉のみ使用する独特なスタイルです。
清らかな花のようなフレッシュな香りには根強いファンが多いです。まったりとした口当たりで、渋みがなく、芳醇な味わいを楽しめます。淹れ方は中投方、下投法、二段階法を用いると良いでしょう。お茶を入れた後の茶殻は柔らかで艶のある黄緑色をしています。
中国茶 太平猴魁 緑茶 ベタークラス 100g
湯温度:85〜95℃
抽出時間:3〜4分
六安瓜片
安徽省六安市にある大別山地域で生産されている安徽省を代表する銘茶です。採摘後、茎を取り除いて、葉の部分も一枚一枚選び分けて乾燥させます。茶葉の形が瓜に似ている独特な形状をしていることから、「瓜片」の名前がつけられました。また、茶葉が内側に丸まっていることから「片茶」と呼ばれることもあります。茶葉は他の中国緑茶と比べると緑の色に深みがあり風格が漂います。比較的火入れが強めで、芳醇な味わいとやや強い香りが楽しめます。日本の緑茶とも通ずるような爽やかな余韻があります。
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湯温度:85〜95℃
抽出時間:3分程度
明前碧螺春
中国緑茶の中でも人気の銘柄です。
中国10大銘茶の1つで、「碧螺春」の名は、清の康熙帝が茶葉の色が緑で形が巻貝のように螺旋状であり、春に取れることから命名したとされています。
小さな新芽を一つ一つ摘み、500グラム当たり約5万個の新芽が必要と言われるほど、希少価値の高いお茶です。まさに気の遠くなるような茶摘みの賜物と言えましょう。
果物のような香りとなめらかな甘み、程良い渋みが一体となって口に広がります。水色は明るい黄緑色で、優しく瑞々しい甘みと芳醇で上品な味わいとが楽しめます。淹れ方は上投法が良いでしょう。
美しい外観に、淡い緑色の水色、柔らかい花のような香り、これらの要素と味が一体となり、個性的な存在感を引き出しています。
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天香茶行 碧螺春(有機栽培 中国緑茶)40g 【 お茶 茶葉 】
湯温度:80〜90℃
抽出時間:3分程度
平水珠茶
浙紅省紹興市の東南に位置する平水鎮で作られるお茶です。欧米だけでなく中近東や北アフリカなど多くの国で人気があり、その小さく丸められた茶葉の形から「ガンパウダー(火薬)」と言う物騒な名で親しまれています。春に積まれる茶葉で作られる、炒青緑茶の一つで、茶葉が揉捻された円珠状で、外観は丸くしっかりした作りで、丸まった茶葉は表面に艶があります。水色は黄色がかって濃く、焙煎度の高いスモーキーな香りと、キリリとした強く濃い味わいが特徴です。ミントやシナモンをブレンドしたり、ミルクを入れたチャイスタイルで楽しむのにのにもお勧めです。
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湯温度:85〜90℃
抽出時間:1分30秒程度
松陽銀猴
1981年に誕生した新しいお茶です。江南茶区である浙江省松陽県で生産されており、浙江省の十大名茶の一つです。
捻られた茶葉は若緑色で艶があり、白毫と呼ばれる産毛が多いものです。この白毫が銀色がかっていることと、やや曲がった形状が猿が腰を曲げているように見えることから「銀猴」と名付けられたと言われています。
花のような強い香りで、その香りの持続性が高いのがこの茶葉の特徴です。やや重厚感のある中に爽やかさも感じられます。
湯温度:85〜95℃
抽出時間:3分程度。
台湾碧螺春
台湾の台北間産経で作られる高級緑茶です。中国緑茶の代表格であるピーローションを手本にして作られたお茶です。精神監視などの品種を使用し、草の息吹を感じさせる、しっかりとした香りと深みのある甘みが特徴です。
日本の緑茶に近い爽やかなのどごしで、中国緑茶初心者にもオススメです。茶葉は深い緑色をしており、水色は明るく淡い緑色になります。清々しい花の香りと芳醇で厚みのあるしっかりとした味わいが特徴です。淹れ方は、上投法が良いでしょう。ここ数年は台湾でも人気が高いお茶です。
No.41528 三峡碧螺春 早春摘み 20g リーフ
湯温度:85〜95℃
抽出時間:3〜4分程度
台湾龍井
1949年、銘茶として名高い中国杭州産の龍井茶を手本にして台湾で作られました。台湾では珍しい緑茶の1つです。
茶葉は針のようにぴんと長くまっすぐで、美しい若草色をしています。中国の龍井よりも大きく長く、白毫のある若芽が多いのが特徴です。
味は、柔らかな渋みと豊かな甘みがあり、フレッシュな花のような優しい香りと、はっきりとした旨味が味わえます。香りも味も濃厚でしっかりしており、中国の西湖龍井よりも力強さを感じることができます。淹れ方は下投法が良いでしょう。
喉越しが良く、釜炒りならではの香ばしさもある台湾龍井は、中国の龍井よりもリーズナブルで、日常的に飲むお茶としては気軽に楽しむことができるのも魅力の1つです。
湯温度:85〜95℃
抽出時間:2〜3分程度
お茶を美味しく入れるコツ。
茶葉の説明のところでお茶の淹れ方について書いていますので、それについて説明をします。
茶葉をどのタイミングでお湯の中に入れるか?これがお茶のおいしさを大きく左右すると言っても過言ではありません。
お茶の淹れ方には幾つかの伝統的な方法があります。それは
- 茶葉を入れてからお湯を注ぐ下投法
- お湯を注いでから茶葉を入れる上投法
- お湯を三分目位まで注いでから茶葉を入れる中投法
3つです。現在は飲む前に茶杯を回して香りを立てる、万能な二段式を採用することが多くなっています。
上投法
お湯を注いでから茶葉を入れるため、なかなか茶葉は沈みません。また、お湯を先に注ぐため、湯温は低くなりがちです。そのため、細い形状で重みがあり、低めの湯温が適した茶葉にオススメの方法です。
中投法
容器の三分目位までお湯を注いでから、茶葉を浮かべるように入れて、しばらく待ってから残りのお湯を注ぎます。茶葉をゆっくりと時間をかけて沈めていくので、じっくりと味を引き出す茶葉にはオススメです。
下投法
あらかじめ茶葉を入れておき、そこにお湯を注ぐため、3つの方法の中では、最もダイレクトにお湯の温度の影響を受けます。そのため高温で入れる茶葉向きです。ただし温度を調節すればどんな茶葉でもOKです。
如何でしたか?
茶葉の種類も実に豊富で数千を越すといわれ、多様性に惹かれる人も多い緑茶について「最も歴史的に古く、最も多く生産され、最も多く消費されるお茶。それは緑茶…という話。」と題して記事を書きました。
日本にも多くの種類の緑茶があるように、中国にも実に多くの種類の緑茶があります。中国だけではなく、台湾にも緑茶はあり、自分に合った一杯を探す楽しみは尽きません。
次の記事では白茶について書く予定です。