こんにちは
中国茶礼讃へようこそ。
管理人の篠塚です。
これまでの記事に書いてきましたが、中国茶は製法により6種類に分類されます。実は、その他にもかなりメジャーなものがあり、第7のお茶と位置づけられるのが花茶です。今回の記事では、その花茶の代表的銘茶をご紹介しましょう。
花茶は、お茶と花とのコラボレーションを様々に楽しむもの。
花茶とは、花を用いたお茶の総称であり、大きく分けると以下の2つのタイプがあります。
- 茶葉に花の香りをつけたもの
- 花びらや花そのものを乾燥させたもの
茶場には香りを吸収する性質があり、これをうまく利用したのが前者です。緑茶や青茶、黒茶、紅茶などに、花を混ぜ合わせ花の香りを移します。このタイプには純粋に着香したものや、茶葉に花をブレンドしたものがあります。
後者は、茶葉を糸などで結わえて中に花を仕込み、香りや味わいはもちろんのこと、お湯の中で揺らめく花の形を楽しむことができます。そのため、ガラスのポットで入れたり、グラスでいただいたりすると良いでしょう。
製造工程
花茶を代表する茉莉花茶の製造工程を見てみましょう。
安徽省や福建省の香りを吸いやすい烘青緑茶を原料とし、一般的に「三窨一提」と呼ばれる、茶葉と茉莉花を一緒にして花の香りを付ける工程を経て製茶されます。
春に摘まれた茶葉は、荒茶にした後、茉莉花が咲くまで倉庫で丁寧に保存されます。業莉花の蕾が膨らむと、蕾の状態で工場へ運ばれ、花が開き始めるのを待った後、花を包むように茶葉をかぶせ、5時間程度放置します。茶葉は自然に50°C弱まで温度が上がります。香りが付いてきたら、蒸れないよ うに風を通し、茶葉と花が混ぜられます。さらに5時間ほど放置し、一定の温度まで下がったら、再び堆積を作り5時間程度放置します。これで一窨が終了します。1回の香り付けに用いられる茶葉は、茶葉100kgに対して茉莉花は50 ~60kg程度使用されます。花の香りが茶葉に移ったら、ふるいを使って花を取り除き、そして火入れを行ないます。この作業を数度繰り返した後、再び花を加える作業が行なわれ(提花=ていか)、最終的に花はすべて手で取り除かれてようやく茉莉花茶ができ上がるのです。
この様に、茉莉花茶は非常に手のかかるお茶なのです。
歴史
花茶の起源は、宋の時代にまで遡ると言う説がありますが、これは現在の製法とは異なるものです。通説では、元の時代にその起源があるとされています。モンゴルとの交流により、お茶に香辛料などを入れることが普及し、花を混ぜ合わせた混ぜ茶が普及し飲まれるようになったのが、現在の花茶の始まりです。
代表的な花茶、その特徴と味わい
花茶はコラボの方法により2つに大別される
花茶は前述したとおり、花の用い方で大きく2種類に分けられます。
- 茶葉に花の香りをつけたもの:茉莉花茶、菊普茶、桂花毛尖
- 花びらや花そのものを乾燥させたもの:桂花、菊花茶、玖瑰花茶
また、香りや見た目が美しい花茶は、そのまま飲むだけではなく、他のお茶とブレンドするとまた別のおいしさが引き出される楽しみがあります。
例えば、普洱茶に菊花茶をブレンドすると、喉越しが爽やかになります。「普洱茶の独特の香りが苦手」と言う方にもオススメの飲み方です。
その他にも、玖瑰花茶と祁門紅茶とをブレンドすると、花や果実を思わせる華やかな香りの祁門紅茶にバラの香りが加わり、一層濃厚な香りが楽しめます。
代表的な花茶
真珠花茶(龍珠花茶)
真珠花茶は、福建省・浙江省で採れる緑茶の新芽を1本1本揉んで丸め、味に深みを出しています。コロンとした丸い形状が真珠に似ていることから命名されています。茶葉とジャスミンの花とを交互に重ね3回以上香り付けしているのが特徴です。別名「龍珠花茶」とも呼ばれています。
上質なものは、2戦目以降も香が長く続きます。清々しいジャスミンの香りによるリラクゼーション効果や、食中毒の防止、消臭効果、美容・美肌効果も期待できます。ジャスミンの芳香と緑茶の深い味わいとを同時に味わえるのが、この真珠花茶です。
この真珠花茶を入れる際にガラスポットやガラス製の急須を使用すると、お湯の中で茶葉が、徐々にふわりと開いていく様子が見られ、香りや味と同時に視覚でも楽しませてくれます。
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湯温度:85〜95℃
抽出時間:1分程度
菊花茶
菊花茶は、漢方薬の材料としても知られる小さい菊の花を乾燥させたお茶です。菊の花の最盛期である9月ごろに多く作られ、浙江省・杭州の品種が最も有名です。中国の北部地方で特によく飲まれているようです。
ほんのりとした自然な甘みと清らかな香りとが特徴で、心を静める鎮静作用、眼精疲労回復、咳止め、鎮痛など風邪のひき始めにも効くと言われています。また、体内の熱を下げる解熱効果があるとされ、夏の暑い時期に飲むのもオススメです。
そのまま菊花茶にお湯を注いで飲むほか、緑茶や普洱茶とブレンドさせて飲まれることも多いです。普洱茶とブレンドしたものは「菊普茶(コポチャ)」と呼ばれ、香港などで人気が高いです。
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湯温度:90〜100℃
抽出時間:2分程度
玖瑰花茶
玖瑰花茶は、バラ科バラ属ののハマナスの蕾を乾燥させたものです。華やかで優雅なバラの芳香と淡いバラ色の水色で、香りでも視覚でも優雅な気分になれ、リラックスできるお茶です。余談ですが、このハマナスの果実はローズヒップとして食用になるのですよ。
バラの香りが強いので、苦味や渋みはあまり感じずとても飲みやすいお茶です。水出しにしても、また違った味わいや印象になるのでお試しください。さっぱりとした口当たりで気分をリフレッシュすることができるでしょう。
また、ビタミンCが豊富で「美肌を作るお茶」とも言われ、他にも生理痛の軽減、血液の循環を良くする作用など女性に嬉しい成分がたっぷり詰まっているのも特徴です。
烏龍茶、普洱茶、紅茶との相性もとても良く、ブレンドするのもオススメです。つぼみを浮かべれば、ビジュアル的にも華やかで来客用にも最適です。
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湯温度:85〜90℃
抽出時間:2分程度
桂花茶
桂花茶は、金木犀の花を乾燥させたもので、広西省の桂林で採れる品種が有名です。キンモクセイの甘い香りと、目にも鮮やかな黄金色の水色とが特徴です。甘みが強く飲みやすい桂花茶は、飲用のほか蜂蜜漬けにしても良いでしょう。
緑茶や烏龍茶との相性が良く「桂花龍井」や「桂花烏龍」が有名です。自宅でも、桂花茶の茶葉をひとつまみ加えるだけで、手軽にオリジナルのブレンドティーを楽しむことができます。また、消化を助ける作用があるので、食後の一杯にも最適でしょう。
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こちらの商品は、桂花茶と他のお茶とをブレンドしたものです。
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桂花烏龍茶50g キンモクセイ ウーロン茶 桂花茶 花茶 茶葉
湯温度:85〜95℃
抽出時間:1〜2分程度
如何でしたか?
今回の記事では、今までご紹介してきた6大茶に続く第7のお茶と位置づけられる花茶について「花の姿や香り、楽しみが様々に広がるお茶と花との奇跡のコラボ。それが花茶…という話。」と題して記事を書きました。
花茶もまた実に多くの種類が市場には出回っています。最初に茉莉花茶の製造工程をご紹介した際、その工程の最後で花が取り除かれていましたが、その一方で、花がたっぷり入ったジャスミン茶もあります。それは、四川省産のもので「碧潭飄雪」というお茶は、花のコリを吸収させて取り除いた後、最後にタップリと飾り用の花を混ぜて仕上げられます。その名の由来「碧潭=碧い湖」「飄雪=舞う雪」の通り、見た目がとても華やかなお茶です。
茉莉花茶ひとつを見回しても様々な種類があり、それらを飲み比べてみるのも一興です。
茉莉花茶は、健胃腸作用や脂肪溶解作用があるため、油を多く使った中国料理と一緒に飲まれることが多いお茶です。茶葉の加工過程で生まれる酵素が胃腸によく、便秘にも効果的であるそうです。また、ジャスミンの花の主成分であるアセトンが血圧低下にも良いとされています。
さらに、ジャスミンの香りには、自律神経の緊張を緩和させ、ストレス解消につながるリラックス効果、集中力を高める効果もあります。朝の目覚めが悪い時や集中できないときにはジャスミン茶を入れて一息つくのも効果的です。
次の記事では工芸茶について書く予定です。