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中国茶礼讃へようこそ。
管理人の篠塚です。
黒茶といえば、普洱茶が日本ではよく知られていますが、普洱茶は黒茶の一つの種類であって、その他にもいろいろな黒茶があります。今回の記事では、その黒茶の代表的銘茶をご紹介しましょう。
後発酵させることで、黒茶には独特の香りと味わいとが生まれた。
ダイエット効果があるとして、日本でも支持されている普洱茶。この普洱茶に代表されるのが、黒茶です。渥堆と言う特有の工程によって後発酵させるのが特徴で、水色は黒っぽく、ややクセのある熟成した香りを放ちます。
黒茶は、後発酵の方法により生茶と熟茶とに分けられます。
生茶は、緑茶を年月をかけて後発酵させたもので、年代を経るにつれ熟成が進み、香り・味ともに変化します。数十年以上も寝かせた生茶は希少価値もあり、ヴィンテージ品として高値で取引されます。
一方、熟茶は1970年代に発明されたもので、渥堆によって短時間寝かせることで、数十年熟成させた生茶のような味わいを実現させたものです。
また、茶葉の形によっても分類されます。茶葉タイプの散茶と、茶葉を固めたタイプの緊圧茶とに大別されます。後者はさらに、お椀型の沱茶、レンガ型の磚茶、円盤状の餅茶など、その形によって種類は様々です。
製造工程
緑茶の工程が基本となっていますが、一連の工程の乾燥の手前で、渥堆といわれる特有の工程が加わるのが黒茶です。渥堆とは、高温多湿の雰囲気で水分を含んだ茶葉を積み重ね、そこに菌をつけて作用させ、急速に発酵させることです。この工程を経て、再び茶葉を再度揉捻した後プレスにより固形にし、その後自然乾燥させます。
歴史
黒茶の始まりは雲南省普洱県と言われ、文献上に初めて現れたのは11世紀末の北宋時代です。モンゴルなど内陸部への輸送の便を考えて作られたことから、「緑茶」と同様に歴史の古いお茶だと考えられています。しかし、その加工方法が確立したのは明の時代です。脂肪を分解して消化を助ける働きがあると考えられ、当時より貴重な効能を持つお茶として発展していったとされています。
代表的な黒茶、その特徴と味わい
黒茶の中で形状や加工方法により細分化される
黒茶は前述したとおり、形状や加工方法によって分類があります。
形状による分類
- 散茶 :六堡茶
- 緊圧茶(餅茶):普洱圓茶
- (沱茶):小沱茶
- (磚茶):千両茶、康磚
製造工程による分類1
生茶の場合は、晒青緑茶や炒青緑茶を蒸気で加熱し湿らせ、軽く揉捻した後、プレスし固形にして、その後自然乾燥・自然発酵させます。一方、熟茶の場合、茶葉を萎凋させた後、殺青を行ない揉捻した荒茶を渥堆(水をかけて茶葉を湿らせ、堆積させて麹カビなどを繁殖させる行程。途中、何度か攪拌)させ、再度揉捻した後、乾燥させます。緊圧茶の場合は乾燥の前にプレスして成形する工程が入ります。
- 生茶:生青磚、生青餅茶、生沱茶
- 熟茶:六堡茶、千両茶、塾磚茶、塾餅茶、塾沱茶
製造工程による分類2
その他、黒茶ならではの工程、渥堆をいつ行うかによっても分類できます。
- 殺青後
- 揉捻後
- 日光乾燥後
代表的な黒茶
普洱生散茶
普洱生散茶は、原料に雲南大葉種を使い、天日干しして乾燥させた青緑茶です。渥堆で後発酵させる熟茶と違い、年月をかけて自然後発酵させます。通常は散茶ですが、様々な形に緊圧して、運びやすい固形茶とすることもあります。
新茶は色が緑茶に近く、1枚1枚が大きく肉厚で柔らかな茶葉から抽出されるお茶は、干しぶどうのような香りでフレッシュな口当たりです。一方、10年以上熟成させたもので淹れるお茶は、水色が茶褐色で、苦味の角が取れてまろやかな味わいになります。また、数10年ものの茶葉はヴィンテージとして高値がつくこともあります。茶葉を自宅で寝かせ、数年後の味わいに期待するのも一興です。
そうは言っても、生茶の価値=熟成年数ではありません。生茶は、風通しの良い乾燥した倉庫で天然の麹菌の働きによってじっくり発酵させます。その保管方法により品質が大きく変わるため、熟成年数が長いからといって必ずしも価値が高くなるとは言えません。
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プーアル茶 生茶 茶葉100g プアール茶 プーアール茶 なまちゃ 発酵茶 黒茶 散茶 中国茶
湯温度:95〜100℃
抽出時間:1分程度
普洱熟散茶
1970年代、長い年月熟成させるのが一般的であった普洱茶界に、短期間で後発酵させる画期的な熟茶が登場しました。数十年熟成させて飲み頃になる生茶に対し、短時間寝かせるだけで美味しく飲める様になるため、現在では、この熟茶は多くの人々に好まれ大量生産されています。そうした意味で、熟茶は普洱茶を一般的なものにしました。
熟茶は渥堆により黒茶特有の香りと味を熟成させます。その暗褐色でしっとりとした触り心地の茶葉から抽出されるお茶の味わいはまろやかで香りも芳醇です。
日本でも「減肥茶」という愛称とともにダイエット茶として親しまれよく飲まれています。注意が必要なのは、まれにカビやほこりの匂いがする悪質な茶葉が出回っているので、信頼のおける店舗から購入されると良いでしょう。
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湯温度:95〜100℃
抽出時間:1分程度
普洱小沱茶
黒茶をプレスして成形した緊圧茶の中で、丸く本形に固めたものを沱茶と呼びます。サイズは直径2〜10cm程と様々で、生茶と熟茶とがあります。薄い包装紙を剥がして茶葉をそのまま湯飲みに入れ、お湯を注ぐだけで楽しめる手軽さがポイントです。真ん中の凹みは包装紙の結び目の跡です。一般の普洱散茶に比べてすっきりと飲みやすく、普洱茶が苦手な人にも愛好家が多い様です。また、健康茶としての評価も高く、その効果はヨーロッパでも話題になっています。
この沱茶は、成形の段階で生形や金属の形を使って小さな腕の形に固めており、その形状の起源は1917年に雲南省の製茶場で開発されたと考えられています。もともとはお椀のような形状を表す『坨(い)茶』と名付けられていましたが、沱江の水で淹れるとおいしいとのことから現在の名称に改名されたそうです。
湯温度:95〜100℃
抽出時間:1分半程度
六堡茶
黒茶と言うと雲南省の普洱茶が有名ですが、六堡茶が産出される広西省の蒼梧県六堡郷も黒茶の名産地として知られています。その歴史は古く、現在は主に香港やシンガポール、日本などに輸出されています。
六堡郷の気候は、雲南省に似ており大葉種がよく育つ地域ですが熟成環境が異なるため、普洱散茶よりも穏やかな味わいです。黒く艶があり締まりがある茶葉から抽出されるお茶は果実のような香りでクセが少なく、飲みやすいと多方面で高く評価されています。もちろん他の黒茶と同じく脂肪やコレステロールを分解する作用もあり、健康茶としても愛する人が多いです。
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湯温度:95〜100℃
抽出時間:1分程度
普洱茶磚
普洱茶磚は、直方体に固められた茶葉で、その形状がレンガを思わせる点が名前の由来となっています。
緊圧茶の一種で、茶葉を固めて成形し、飲む際にはナイフなどで必要な分だけ割って用います。似たものに正方形の方茶があります。持ち運びがしやすいとしてチベットなどの少数民族に愛用されたといいます。
<方茶>
茶磚には生茶と熟茶があります。風味が強い雲南大葉種の茶葉を使用した上の写真の熟茶は、木を思わせる香りで水色は褐色です。芳醇な味わいが魅力的です。
普洱茶の産地として名高い雲南省では、茶葉は重要な資源でした。チベットやモンゴルのへの輸送も多く輸送に便利なように様々な形に成形しました。
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湯温度:95〜100℃
抽出時間:1分程度
千両茶
下のリンクはお茶の専門店HOJO(株式会社HOJO)のBlogです。その「巨大なお茶到着」という記事にある写真を御覧ください。身長150〜60cmくらいと思われる女性の傍らに、その女性とほぼ同じ長さのお茶が立てかけられています。
この千両茶という名前は、古代の計量単位に由来があり、千両(約36.25kg)の重さがある円柱状の緊圧茶です。円柱状で堅く、竹で包まれているまるで樹木のようなフォルムは、一見の価値があるといえましょう。さすがに、36kgもあると、消費するのに莫大な時間を必要とするので、1/10サイズの「百両茶(3.625kg)」や1/100サイズの「十両茶(362g)」もあるそうです。
千両茶は、製茶年代の古いものほど希少価値があり、ヴィンテージ品として価格が上がります。この独特な形状の千両茶の産地である安化県は、湖南省における黒茶製造の発祥地でもあり、その歴史は非常に古いのです。味わいは、製造年代によって異なりますが松を燻した様なスモーキーな香りがとても上品で、とても飲みやすく、ほのかな甘みもあります。
湯温度:95〜100℃
抽出時間:1分程度
康磚
この康磚と言うお茶は、中央が古代の枕の様に窪んでいることから名付けられました。茶葉の包装紙として使われる黄色は、チベット教における神を示す色です。ダライ・ラマなどの要人や、宮殿へ納められていることを示す色であると言われています。
高原地帯であるチベットでは茶樹が育ちにくいため、茶葉は四川省などから輸入されています。この康磚の形状も輸送に便利なように工夫されたものです。チベットの飲み物として知られるバター茶にも使われ、チベット人の栄養源として日常的に親しまれている茶葉でもあります。
チベットでは、政府により茶葉の価格が決められているため、中国国内で作られている茶葉でもそれほど品質が高くないものが流通しています。1包み500g=1斤で、飲む際にはハンマーで少量ずつ割ってから使います。
湯温度:95〜100℃
抽出時間:1分程度
普洱圓茶
普洱圓茶は、円盤のような形状をした、普洱茶の代表的な「餅茶」と呼ばれる茶葉です。その他に、7枚を1セットとして包む、「七子餅茶」もあります。このお茶も生茶なので製茶年代の古いほどものほど希少価値が高く、ヴィンテージ品として扱われております。製造後半世紀以上過ぎた1960年代に生産された生茶等は5,000,000円の価値がつくこともあると言われています。
リンク先で紹介した普洱圓茶は熟茶を利用して作ったものなので、価格的にはリーズナブルです。
湯温度:95〜100℃
抽出時間:1分程度
如何でしたか?
今回の記事では黒茶について「ダイエットだけではない!黒茶には様々な効能が隠されている…という話。」と題して記事を書きました。黒茶は、雲南省、四川省、湖南省、安徽省などが産地ですが、それぞれに作られるお茶は製造方法も形状も味わいも非常に特徴があります。
黒茶の効能は様々ですが、体を温めるお茶もあれば冷やすお茶もあります。また、胃腸に優しくダイエットや体調管理、さらには種類によっては肝臓の働きを助けて二日酔いを緩和するという効果もあります。お茶によって効能に差があるので、種類や飲むタイミングなどにも気をつけて楽しみましょう。
次の記事では花茶について書く予定です。
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